10月4日、クリニックをお休みして大腸のポリープを取りに行ってきました。
8月におこなった大腸内視鏡で数個のポリープが見つかっていたのですが、今回それを切除したのです。
小さなポリープであれば検査の時に取ってしまいます。
しかしある程度以上の大きさだったり数が多かったりすると日を改めて切除することが多いです。
具体的に何ミリ以上なら日を改めるのでしょうか。
何個以上なら別の日に切除するのでしょうか。
……それは検査医の判断にもとづきます。
検査医はこれまでの経験をもとに一期的に切除するべきかどうか判断します。
同じ大きさ、同じ数のポリープを見てもある医師は検査と同時に切除できると考え、別の医師は日を改めようと考える。
それを決めるのはその医師のポリシーであって、どちらがより優れているというわけではありません。
同様に、切除する場合、日帰りでおこなうのか、入院させておこなうのか、も主治医のポリシーによる判断です。
こちらの病院では日帰りでするのに、あちらの病院では入院しないといけない、だからこちらの病院の方が優秀……、というわけではありません。
私は今回金曜日に入院して手術、そして翌日退院というコースを選びました。
(2019年10月7日)
入院の日、指示された時間に病院の窓口に赴きます。
そこでいくつかの書類を書いて病室に案内されます。
今回入院したのは四人部屋の手前側のベッドでした。
すぐに看護師さんが「モビプレップ」という腸の洗浄液を持ってきてくれました。
これを1リットル、それと同時に500㏄の水を自分のペースで飲みます。
ここから先は個人差が大きいと思います。
私の場合飲み始めて30分程度で下痢が始まりました。
それから30分に一回のペースでトイレに行きました。
排泄液が完全に透明になると「前処置」が終了、つまりいつでも内視鏡がおこなえる状態になったということです。
モビプレップ1本を飲み終わる頃に排泄液が透明になる人が多いそうです。
私の場合は8月の検査でもモビプレップ1本では不十分だったので、とっとと飲み終えて「おかわり」をもらいました。
少し甘みのある石鹸水のような味です。
苦手な人もいるかもしれませんが、私は苦痛ではありませんでした。
私の場合透明になるまで結局3時間以上かかりました。
(2019年10月9日)
検査は外来の患者から先におこないます。
私のような入院患者、特に、複雑な処置を必要とする患者はあとの順番になります。
ですが入院していると眺めのいい談話室でゆっくりとモビプレップを飲むことができます。
前処置が終わってから手術までの時間も自分のベッドで本を読んだりうたた寝をしながら過ごすことができます。
あわただしい外来で検査前の不安な1時間を過ごすのと、静かなベッドでゆったりとした3時間を過ごすのと、私の個人的な好みからいうと後者の方がありがたかったです。
そうそう、排泄液は看護師さんにチェックしてもらわなくてはなりません。
完全に透明になったという看護師さんのお墨付きが得られて初めて検査のGOサインが出されるのです。
私としてはそこそこきれいになったと思ったのに看護師さんに「もうちょっとですね」と言われたりしました。
なかなか厳しいです。
やがて私の手術の順番がやってきました。
点滴を打たれて車いすに載せられます。
何だか重病人になったような気分です。
(2019年10月11日)
看護師さんに車椅子を押されて内視鏡室に向かいます。
病棟看護師から内視鏡室看護師に引継ぎされます。
私の頭越しに個人情報や専門用語がやり取りされます。
「松本修志さんです」
というやり取りに私は相槌を打つ隙もなく、黙って聞いているだけです。
この時には何だか自分がモノになったような気分がしました。
と同時に、これくらい客観的に扱われた方が気が楽だとも感じました。
あとは流れ作業となります。
ベッドに横になると身体のあちこちにモニターがつけられて、すぐに手術が始まりました。
手術自体は1時間ちょっとで終わりました。
人によってはかなりの苦痛を伴う大腸内視鏡ですが、今回はとても楽でした。
大腸にはいくつか急カーブを描く部分があって、内視鏡がそこを越える時に得も言われぬ気持ち悪さを感じた程度でした。
器具も進化していますし、教育システムの進歩のおかげで医師の内視鏡テクニックもかなり進んでいます。
痛みが苦手な人の場合は全身麻酔で寝ている間におこなう方法もあります。
「以前ものすごく痛かったから」、あるいは「ものすごく痛いと聞いたから」という理由で大腸の検査を渋っている皆さん、今や大腸検査は苦痛を伴う検査ではなくなっています。
迷っている方はぜひご相談ください。
(2019年10月16日)
私は3、4年に一度のペースで大腸の検査をおこなってきました。
前回は2015年。
その時の大腸には異常がありませんでしたが、今回はポリープが6個見つかりました。
いずれも良性でしたし、1泊入院で簡単に切除することができました。
それを考えると4年に一度は検査しておいた方がよさそうです。
胃の内視鏡に比べて大腸の内視鏡は確かに敷居が高いです。
しかし繰り返しになりますが、検査自体の苦痛度は年々下がっています。
モビプレップの登場で「前処置」もかなり楽になりました。
癌生存率の統計を持ち出して検診の意義を否定する人がいます。
そういう説を聞くと私は身体がくすぐったくなります。
だって私は日本人の癌生存率を高めるために検査を受けているのではありません。
自分の安心のためにしているのです。
今大腸の検査をして何もなければ、4年間は大腸癌にはならないのです。
この安心感のために1日という時間と1万円ちょっとのお金を使っているのです。
癌になったらなったであきらめる、だから検査はしない。そんな風に言う人もいます。
癌になったら突然ころりと死ねると思っているのでしょうか。
楽な癌などありませんが胃癌も大腸癌も非常につらい病気です。
どれくらいつらいかと言うと、胃癌と大腸がんは「余命1か月でも手術をした方がいい」くらいつらいのです。
(これについてはまた機会があれば書きたいと思います。)
とにかく言いたいことはたった一つです。皆さん、大腸の検査をしましょう!
(2019年10月18日)