~電話で相談できること、できないこと~

返事に困る電話相談が他にもあります。

「痔の日帰り手術をしていますか?」

という質問です。
実は「日帰り手術」という名前の手術があるわけではありません。
前回も書きましたが痔にはいろいろな種類があって、それぞれに対してそれぞれの治療法があります。
そのうちの一部、入院しないでおこなえる処置や小手術のことを「日帰り手術」と呼びます。
ですからいろいろな病気に対していろいろな「日帰り手術」があるわけです。

一つの病院でも設備の関係で、できる「日帰り手術」とできない「日帰り手術」が当然あります。
また技術的には可能だけれども医師の信念に基づいて日帰りでおこなわない場合もあります。
大きな専門病院でもすべての「日帰り手術」ができるわけではないのです。

ですから「日帰り手術をしていますか?」という質問にはこう質問を返すことになります。

「どこかの病院でその手術をするように言われたのですか?」

もし相談者がまだどの病院にもかかっていないのであれば、その人が気にすべきなのは「日帰り手術ができるかどうか」ではありません。
とりあえず病院にかかってまず診断してもらうことです。
その結果、日帰り手術どころか全く治療を必要としない場合もあります。
逆に、緊急で直腸切除術が必要になる場合もあります。

また繰り返しになりますが、ある病院では日帰りでおこなう手術を、別の病院では安全性や効果をもっと深く考慮した上で「入院手術」としておこなう場合もあります。

大切なのは「日帰り手術ができるかどうかで肛門科を選ばない」ということです。
(2015年6月15日)

似たような意味で次の質問に答えるのも結構難しいです。

「大腸の検査をしていますか?」

当院では大腸内視鏡検査はおこなっておりません。
したがって「大腸の検査をしていますか?」と尋ねれられれば「内視鏡検査はおこなっていません」とお答えするしかありません。

しかし大腸内視鏡が必要となる場合にもさまざまな状況があります。

自覚症状はないけれど検診の便検査で引っかかった場合、内視鏡検査は大至急必要というわけではありません。
この場合、内視鏡が上手という評判の個人病院、たいていそういう病院は予約が数か月待ちのことが多いですが、そこを予約するのがベストだと思います。

最近下痢気味で時々便に血が混じる、という場合はどうでしょうか。
すぐにでも救急外来を受診した方がいい場合もあればしばらく整腸剤で様子を見てもいい場合があります。
その判断のためにいきなり大病院を受診するのは非効率的です。
直接大病院にかかっても、ほとんどの場合、検査は何日かあとになります。
まず当院を受診しても手間は変わりません。
当院で診察して内視鏡検査が必要であれば大病院を紹介します。
地域医療連携システムなるものがあるので、個人的に大病院を受診して内視鏡を手配してもらうよりは、スピーディーに予約できると思います。

大腸の検査について問い合わせる時には、ぜひ症状も併せてご相談ください。
(2015年6月17日)

もう一つ答えに困る質問があります。

「病院に行きたいがどの病院に行けばいいのか?」

たいていは「うち(松本胃腸科クリニック)に来てください」で済むのですが、問題は遠方の人の場合です。
お尻の病気はほとんどの場合一定期間の通院が必要ですから、基本的に「一番近い病院」が「一番いい病院」です。
近くに「肛門科」の病院がない場合はどうすればいいのでしょうか?

「肛門科」は「消化器外科」の1ジャンルです。
ですからちょっと前までは「外科」に行けば普通に肛門の診察もしてもらえました。

ところが最近は必ずしもそうではありません。
専門の細分化のせいで、すべての外科医が肛門疾患の診察をおこなえるとは限らない時代になってきました。
これには私も困っています。
当院に通院中の方が転居する時、どこに紹介すればいいのかよく分からないのです。
結局病院に電話をして「おたくは肛門疾患を診てくれるのか」と尋ねることになります。

ですから遠方の方の「どの病院に行けばいいのか」という質問には、本当に情けないのですが、こう答えるしかありません。

「申し訳ありませんが、私にも分からないのです……」